アトピー性皮膚炎の定義
アトピー性皮膚炎とは、日本皮膚科学会ガイドライン(2018)によると、
「増悪と軽快を繰り返す瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くは「アトピー素因」を持つ。特徴的な左右対称性の分布を示す湿疹性の疾患で、年齢により好発部位が異なる。乳児期あるいは幼児期から発症し小児期に寛解するか、あるいは寛解することなく再発を繰り返し、症状が成人まで持続する特徴的な湿疹病変が慢性的にみられる。」
となっています。
アトピー性皮膚炎の人には特徴があります。
かゆみを感じやすい(IgE抗体を作りやすい)体質・バリア(保湿)機能の弱い体質が生まれつきあります。その結果、脳がかゆみを感じやすい状態になり、体をかきむしってしまうわけです。
アトピー性皮膚炎の増悪因子(悪くする原因)は?
- 精神的なストレス
- 衣服の刺激(特に毛糸など)
- 汗
- 気候(乾燥や寒さ)
- プールや銭湯などの消毒液
等々・・・
アトピー性皮膚炎と遺伝
遺伝子は人間の設計図です。遺伝子診断の技術進歩がどんどん進み、遺伝子からその人がかかる可能性が高い病気がわかるようになってきています。事実2012に独立行政法人理化学研究所がアトピー性皮膚炎の発症に強く関与する8つのヒトゲノム領域を発見しました。この8つの中に、気管支喘息との関係性や、かゆみと関係が深いサイトカインやIgEを増やしたり、Th2型の炎症を引き起こす等の遺伝子を含んだり、免疫細胞との関係もわかってきました。
しかし、親がアトピー性皮膚炎であれば子にも必ず遺伝するというわけではありません。事実私の場合は、近しい親族では「私」と「私の子(3人中1人)」と「私のいとこ」がアトピー性皮膚炎でした。ちなみに両親・祖父母・兄弟はアトピー性皮膚炎ではありません。
アトピー性皮膚炎とアレルギー
まず、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎は全く別物であることを真っ先にお伝えします。以前は関係性があるかもしれないと、食事制限をするような治療もありました。しかし研究の結果、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎は別物である可能性が高くなっているため、『アトピー性皮膚炎の治療として食事制限は全く必要ない』という発言をする医師もいるほどです。では食物アレルギーやそれ以外のアレルギーとアトピー性皮膚炎が完全に別物かというと私はそのように考えません。なぜならアトピー性皮膚炎の人の体質は、「かゆみを感じやすい」と「バリア機能が弱い」からです。ほかのアレルギーによって体にかゆみが引き起こされた場合、普通の人よりも症状が強くなってしまう可能性があるからです。自分のセルフケアの中で避けられるものは避けるべきであると考えます。しかしあまり過度になりすぎるとそれもストレスとなってしまうため、カウンセリングをもとに決めてきます。
実際ある調査では、アトピー性皮膚炎でIgE(アレルギー反応に関与するたんぱく質)が高めであった人のアレルギーを調べると下記のようになりました。
- ダニやハウスダストに反応が出た人が7割程度
- スギ花粉に反応が出た人が5割程度
- カビや動物に反応が出た人が4割程度
- 食物アレルギーに反応が出た人が2割程度
私の場合は、ダニとハウスダストはアレルギーありますが、症状としては中等度です。それ以外は猫に少しでただで、花粉症や食物アレルギーはありません。
かゆみとは何か?
かゆみとは体の持つ防衛反応です。体に微細なものが付着しそれを異物もしくは害のあるものと脳が認識した結果、取り除くための行動として痒みとして認識されます。しかしアトピー性皮膚炎では異物の付着のような原因がないにもかかわらず痒みを感じます。普通の人では感じないような小さな刺激でもアトピー性皮膚炎の人にはかゆみとして脳が認識します。
最新のアトピー性皮膚炎の治療は、「なるべく早く炎症を沈め、保湿をする」というのが主流になります。では「炎症を沈めて保湿をする」ということを本来はステロイド治療だけでなせるはずですが、それだけでは症状が緩和しないのには理由があると考えました。
行きついた答えは、脳のエラーをリセットし治療をしながら、患部の炎症治療をするステロイドを併用することが大変効果的であることがわかってきました。
鍼灸に出会ってからの気づきと感動
大学を卒業後、病院の専門職として仕事をしており様々な治らない病気を目の当たりにしてきました。そんな時ある内科の医師から「医師は病状にあった薬がないと治療ができないけど、鍼灸師は鍼があればいつでもどんな場所でも治療できますよ」と話を聞いたときは衝撃を受けました。治療において医師よりも優れたものがあることに驚きました。
その後鍼灸を調べ学ぶことを決意しました。しかしこの時は鍼灸でアトピー性皮膚炎がよくなるとは全く思っていませんでした。
鍼灸学校では学生同士が実習と称してほぼ毎日鍼を刺す練習をします。仕事と夜間学校の両立は極めてストレスがかかりアトピー性皮膚炎の症状が増悪しやすい環境になっていました。しかし全くアトピー性皮膚炎が悪くなる様子が見られませんでした。肌をかきむしって真っ赤になり、浸出液(透明な汁)が出るような状況にならなかったのです。もちろん一時的にストレスがかかった時は肌をかきむしることがありましたが、症状が落ち着くまでの時間が明らかに短くなったと実感できました。ここから自分の体を使った研究が始まりました。鍼にはさまざまな流派がありその数だけ治療に対するアプローチがあります。その中でもよく効果がわからないものや効いたと実感できるものなど様々です。
当院のアトピー性皮膚炎に対する治療。
①かゆみやアトピーを悪くする原因である自律神経については、鍼灸で治療をする。
②炎症については、その皮膚の状態にあった強さのステロイド治療をする。
③保湿については、基本的なスキンケア(化粧水やローション、ワセリン)をする。
アトピー性皮膚炎の基本
自らが病気に向き合ってセルフケアをすることがアトピー性皮膚炎を和らげる方法となります。
しかし自身ではどうにもならない、外的が要因によって一時的に増悪する場合はしっかりと治療をしなければなりません。
実際の写真と症状の程度
日本皮膚科学会の治療ガイドラインでは、左から「重症」「軽症」「軽微」となります。「重症」は早急治療を進めていかなければならない状態です。鍼治療と比較的強めのステロイド治療が必要となります。「軽症」は保湿を中心としながら、弱いステロイドか鍼治療だけでもすぐに良くなっていきます。「軽微」の状態であれば保湿をしっかり行うことで自然と治っていきます。
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